食品偽装・トレーサビリティ

ポーランドから病気の牛が食肉として流通していることが判明

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食肉として販売されるために屠殺場に運ばれる病気の牛

イギリスの大手一般新聞社ガーディアンが2019年1月27日に公開した記事によると、ポーランドの食肉加工工場に内密で作業員としてもぐり込んでいた諜報員が明かしたビデオにより、極度の重病にかかっている牛が解体され、獣医によるチェックも無いまま、もしくはあったとしても不十分なチェックがされるのみで売りに出されていたことが明らかになりました。

ポーランドはEUにおいて最大の食肉輸出国の1つであり、この事件が食の安全基準に再び大きな警鐘を鳴らしています。

録画されたビデオには、自分の足で立つこともままならない病気の牛が作業員によってウインチ(巻上げ機)のロープでくくられ、屠殺場に引きづられていく様子が生々しく収められています。これはポーランドの首都ワルシャワがあるマゾフシェ県の食肉加工工場での出来事です。

ここでは牛の屠殺(とさつ)は夜に行われていて、現場には獣医の立ち会いもないようです。獣医が立ち会うことはごく当たり前の基準で定められていることですが、当然のように無視されて病気の牛の解体処理が行われています。この屠殺場の作業員は牛が病気であったことの証拠隠滅のために、牛の死骸に残された床ずれや腫瘍を取り除いています

床ずれとは?

寝たきりになった場合などに、体の同じ部分が床から圧迫され続けることにより起こる皮膚障害、壊死のこと

病気の牛は立ち上がることが出来ないので、ずっと座り続けるために皮膚に異常が起こります。それを除去することによって健康な牛であったかのように装っているのです。

2013年に起きた馬肉混入問題の後にイギリスの食品システム監査を指導した食品安全の教授Elliottは、もしこの牛肉がポーランド以外の国に輸出されていることが分かれば、これはヨーロッパ中で多くの規制当局や警察さえ巻き込むことになる大問題だと言っています。ポーランドで生産される牛肉の80%が輸出されているそうです。これは食の安全を脅かす事態です。

日本も当然無関係ではありません。2000年代初頭に起こったBSE(狂牛病)問題が契機となって、日本はEU圏からの牛肉の輸入を禁止してきました。しかしBSEの危険性が収まってきたと判断されて以降徐々に輸入が解禁され、ポーランド産の牛肉も2014年に日本への輸入解禁が発表されています

食肉詐欺を暴いたテレビ番組の調査員による報告

今回の調査員はポーランドのテレビニュースチャンネルTVN24で放送されている調査番組「Superwizjer」から派遣され、2018年末に3週間ほど問題の食肉加工工場で諜報活動のために作業員として働きました。この諜報員の名前はPatryk Szczepaniakと言います。彼が現場での悲惨な状況を記録し、ビデオに収めたそうです。

牛肉は認定された獣医によって検査される必要があると法律で決まっていますが、彼によれば、この工場では従業員が牛の死骸に「人が食べても安全である」とマークを付けるだけです。

諜報員Patrykは以下のように語っています。

「私は監督者から牛肉に健康であるという印を付けるように言われました。そして見た目を整えるためにナイフで磨かされました。腐った肉の悪臭には吐き気がしました。」

Patrykによれば解体は夜に行われ、獣医は翌朝やってきます。獣医の仕事もまた死骸に安全であるというマークを付けることですが、肉自体を検査することもなく、ただ認定証にサインをするのだそうです。

「本来獣医は解体の前、解体時、そしてその後にも立ち会うことになっています。でも私が工場にいた3週間、獣医が来たのは朝だけでした。彼は書類の仕事をこなして、牛の頭を簡単に調べることしかしません。夜のシフトで行われる牛の解体時にも立ち会わないんです。書類上はすべて問題無く見えます。でも実態は本当に大惨事です。」

獣医による認定を得た肉はその後、他国も含めてサプライヤーや消費者の元に送られる前に検査されることはもうありません

Patrykが働いた夜のシフトでは、自分の足で立つことも出来ない病気の牛が3日間で28頭解体されたそうです。そして作業員を辞めて1ヶ月後にもう一度ビデオを撮りに戻ったときは、5営業日連続でトラックが病気の牛を運んできました。

Animal Welfare Science, Ethics and Law Veterinary Associationの議長であるVet Paul Rogerはこう言います。「そのような状態にある動物を殺してフードチェーンに入れることはとても受け入れられることではありません。その動物の何が悪いのかを区別することは出来ません。推測することは出来るでしょう。でも完全な死後の検査をしないならば、推測しか出来ることはないのです。」

ちなみにこの食肉加工工場では、作業員に食事として牛肉が出されていたそうです。諜報員のPatrykはベジタリアンですが、諜報員であることがバレないように牛肉を食べたそうです。

土曜日に放送されたこの番組の終わりに、レポーターが食肉加工工場に突撃しました。そこにいた工場のオーナーと獣医は、カメラを前に自分たちの悪事を一切認めませんでした。

ポーランドで病気の牛の処理に関して摘発されたのは今回が初めてではありません。2018年12月にも、ポーランド中心部のウッチ近くにある食肉加工工場オーナーが、同様の工場運営を行っていたとして懲役刑が課されています。検察官は東ポーランドの食肉工場にも調査を行っているとのことです。

なぜ食肉加工工場は病気の牛を仕入れるのか?

ポーランドでは、病気の牛の価格は健康な牛の5分の1から6分の1程度なのです。今回の事件を暴いたポーランドの調査テレビ番組「Superwizjer」の見積もりでは、1日に20頭の健康な牛を処理した場合、加工工場のオーナーは年間でおよそ347,000ズロチ(1000万円)の利益を得ることになります。一方病気の牛だけを処理した場合、年間利益は250万ズロチにも上り、円に換算すると7200万円以上にもなるのです。

このためポーランドの取引業者はオンライン上で病気の牛を宣伝しています。彼らは病気のため立ち上がることも出来ない牛を、「トラウマにあった」や「ダメージを負った」などの婉曲表現を使って販売しているのです。テレビ番組Superwizjerで2人の調査員がネット上に公表されているそういった業者の電話番号に電話をかけた所、1時間で数十人もの業者と取引について話をすることが出来たとのことです。番組によれば、ポーランド中でこういった業者は実に300ほども存在していると見積もられています。

健康な牛に偽装するために病気の牛の腫瘍は除去される

病気の牛は消費者にとって大きな健康リスク

牛がどんな病気にかかっているのか分からなければ、人間の健康にとってどの程度のリスクがあるのかを特定するのは難しいでしょう。しかし、前述のウッチ近くの食肉加工工場のオーナーに対する起訴において実施された医療・獣医などの専門家による意見聴取によれば、汚染された肉から非常に多様な種類のバクテリアが検出されたそうです。

「病気の動物を床の上で引きずって屠殺場まで運ぶというような扱い方は全くもって受け入れられません。それはまた、非常に大きな健康リスクの可能性を秘めています。」とRoger(Animal Welfare Science, Ethics and Law Veterinary Associationの議長)は言います。「(そのような工場などに対し)充分な調査は行われていませんが、動物から人に伝染する数々の病気があります。例えばサルモネラ菌、大腸菌、足や口で感染が広がる色々な病気です。そもそも肉の認定というのは、これらのリスクを特定し、拡大を防ぐためにあるのです。」

今回の事件は規制の強化に繋がるか?

今回の申し立てはポーランドから牛肉を輸入しているイギリスを含め、多くのEU各国で重大な懸念を招くでしょう。

「多くのヨーロッパの国において、このようなことが行われていると聞きます。」

食品安全の教授であるElliottは、問題の病気牛のビデオを見てガーディアン紙に言いました。

「これは本当によく組織だてられた、周到に画策された犯罪行為です。不可能ではないにしても、こういった肉がどこに行ったのかを追跡することは極めて難しいでしょう。これらの肉が1つでもイギリスに入ったかどうかと聞かれれば、私には全く分かりません。私は過去にもこのような違法サプライチェーンを見てきましたが、それらはいつも広い範囲に広がっていました。なぜなら色々な国において、この違法な肉を誠実なサプライチェーンに持ち込もうとする中間業者がたくさん存在するからです。」

そしてポーランド自身において問題はまだ残っています。つまり、今回の事件が新たな規制に繋がるかどうかについてです。評論家たちの間でも、前回このようなスキャンダルが起きたときにも必要な規制が欠けていたと見られています。

今回のテレビ番組「Superwizjer」のTomaszは言います。

「私達が心配しているのは、いつも通り規制当局がこれは隔離された事件であり、自分たちの責任ではないと主張しようとするだろうということです。そしていつもそうであるように、このような事件があっても世の中が通常通りに戻っていくことです。」

2019年末にEUにおいて新しいトレーサビリティ規制の施行が予定されています。このような詐欺業者が介入する余地のある現在のサプライチェーンにおいて、消費者だけでなく公正にビジネスを行っている業者、企業を守るための規制が整っていくことが望ましいでしょう。

詐欺が可能なのはなぜか?キーワードは「トレーサビリティ」

この事件で明らかになった詐欺業者にとって、病気の牛を売った方が健康な牛を売るよりも何倍も儲かるから売る訳ですね。ではそんなことをして取引先や消費者、規制当局にバレないのでしょうか?今回はテレビ番組から派遣された覆面調査員が、作業員として現場の状況を録画して不正を証明しました。おそらくどこからか情報が漏れて、通報があったのでしょう。

しかしこれは氷山の一角であり、世の中には現在進行系で行われている食品詐欺、サプライチェーン上での不正が山のようにあります。それはなぜか?その理由に関して大きな割合を占めるのが、情報の不透明性です。生産の段階から消費者に届くまでの一連の過程をサプライチェーンと言いますが、現在の食品サプライチェーンにおいて、必要なトレーサビリティが確保されているとは全く言えないのです。

トレーサビリティとは

ある商品を「生産から消費までの全過程」で特定出来ること。
トレーサビリティとは?食品の事例で見るメリット・デメリット

2019年現在、人工知能や自動運転車、IoTによるスマートシティなど数々の技術が発展している中で、いまだにサプライチェーン上のデータ管理は大半が書類によって行われているのです。また仮にすべてが紙による記録ではなく、ある程度はデータベースなどに情報を入力して管理していたとしても、システムが企業ごとに違っていてはスムーズな情報の共有、確認は出来ません。さらにデータの書き換え、改ざんも簡単であり、多くの不正業者は記録をそもそも残していません。今回のポーランドにおける病気牛の販売に関しても、獣医による違法な確認作業が行われていることをわざわざ記録に残しているはずが無いでしょう。

つまり詐欺や不正を簡単にしているのは、トレーサビリティ情報が適切に管理されていないことが原因だと言えます。今までのデータ管理手法では、詐欺業者が提出する情報を本当かどうか確かめる手段が非常に限られているのです。逆に言えば、データの改ざん、記録抹消が容易な今のサプライチェーンにおいて、公正な企業、業者の情報ですら完全に信用することは難しいということです。つまり正直な業者が詐欺業者によって多大なる損失を被っているのです。

解決するのはブロックチェーンによるトレーサビリティ

これらは一見解決のしようがない問題に思えますが、それは一昔前までの話です。このような状況を解決する技術が既に生まれています。それはブロックチェーンというもので、ビットコインを代表とするいわゆる暗号通貨(仮想通貨)に使われている技術です。

ブロックチェーンは史上初めて、不特定多数の相手との正直で透明なデータの共有、管理を可能にしました。暗号通貨を報酬としてシステムに組み込むことによって、世界中の人たちが報酬を得るためにデータの正しさを常に見張ってくれるのです。つまりデータを勝手に消去したり改ざんすることが一切出来ない、信用の出来る情報管理がやっと可能になったということです。

ただしトレーサビリティの問題をブロックチェーンが解決するには、企業がこの技術を採用し、本格的に使い始める必要があります。一般的によくある誤解として、ブロックチェーンは全ての情報を開示してしまうので企業が使えるはずがないという意見があります。しかしそれは間違いで、必要に応じて公開するべき情報を企業が自由に選べるブロックチェーンシステムも存在します。

例えば消費者にとって重要な、産地や品質管理、獣医による健康チェック(どんな免許を持っているどの獣医が担当したのか、バクテリアの検出など)、スーパーなどの小売店に届くまでの輸送経路といった情報を一般公開することで、改ざんがされていないその情報を消費者から信用してもらえるでしょう。これはもちろん売上増加にも寄与します。

逆に一般には公開したくない仕入れ価格や、農家なら独自の方法で行っている栽培の記録などは、プライベートの設定にすることで公開しないようにも出来るのです。

現在このような柔軟なデータ管理によって企業に利益をもたらし、消費者にも自分が購入する商品についての透明な情報を得ることを可能にする実用的かつ革新的なブロックチェーンには、AMB-NET(アンブネット)というものがあります。

IBMなどが提供しているプライベート・ブロックチェーンでは、暗号通貨による報酬メカニズムが存在しないためにデータは全て企業の管理下に置かれています。これでは消費者からの信頼を得ることが出来ず、企業にとっても商品に付加価値を与えることが出来ません

つまり信頼を得るためのブロックチェーンとは、暗号通貨を報酬メカニズムに持つブロックチェーン、いわゆるパブリック・ブロックチェーンでなければなりません。また前述の通り全ての情報が公にされてはデータ管理のシステムとしては使い物にならないので、公開設定を自由にできる、パブリックとプライベートのどちらのメリットも併せ持った、ハイブリッドなブロックチェーンが最適です。AMB-NETは企業にとっても消費者にとっても、また規制遵守の証明を非常に容易にするという意味で、政府にとっても最善なブロックチェーン・ソリューションです。

AMB-NETはスイスやエストニア、ベリーズなどに拠点を持つAmbrosus社が開発しています。

ブロックチェーンのトレーサビリティにAmbrosusを選ぶべき理由

このポーランドの病気牛の問題は日本にも大きく関係がある、消費者の食に対する安心を脅かすものです。世の中の様々なサプライチェーンに存在する業者の中には、このように深刻な悪事を働いているものも残念ながら存在するのです。このような業者の存在は、一般消費者だけでなく取引関係にある業者、企業の信用まで損なう非常に厄介なものでしょう。

AMB-NETブロックチェーンによる次世代のサプライチェーン管理・トレーサビリティシステムが、公正なサプライチェーンを実現します。

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